水戸です。
米国司法省(DOJ)が今年3月に出した自主開示ポリシーについて書きました。
反トラストを除く全ての企業刑事事件を統一した、DOJとして初めての省全体ポリシーです。FCPAの事件もこの枠に入ります。
自主開示・完全協力・適切な是正・加重事情なしの4つが揃えば訴追しない。罰金もモニターもなし。見返りが初めて予見可能な表になりました。
ただ、実務に効くのは時計のほうです。内部通報を受け取った日から、開示の持ち時間が数字で決まる。しかも「内部調査の完了を待たず、可能な限り早期の開示を」と明記されています。調査を固めてから対外対応を考える、という日本企業の標準的な進め方では、間に合わない場面が出てきます。
引き返せない決定に、締切が付いた。ベゾスの言う「片道のドア」の話と重ねると、これが意思決定としてどれだけ難しい形かが見えてきます。だから記事の後半は、危機の渦中の判断ではなく、平時に何を決めておくか(トリガー・時計・出す範囲・決める人)に紙幅を割きました。
▶ 記事はこちら
編集後記
この記事は、書き上げてから一度大きく直しています。
最初の版では、開示するかしないかを「どちらも反射で決めない」という形で並べて書いていました。読み返すと、事実を伏せてやり過ごす選択肢まで並びの中に入って見える書き方になっていた。
書き直して、論点を一段狭くしました。事実を解明し、是正し、責任を問い、必要な当局対応をする ── そこまでは前提。そのうえで「今回の事案で、DOJへの自主開示という手段を取るか」という一点だけを論じる、という形に。
伏せることは選択肢ではない。けれど、開示という手段を取らないことが正しい場面は現実にある。この二つは別の話です。当たり前のようでいて、書き分けないと片方が消えます。
この手の直しは、たいてい自分で読み返している時に見つかります。書いている最中は、自分の言いたいことが見えすぎていて、読み手の目にどう映るかが見えない。時間を置いて他人の目で読む工程が、いちばん効きます。
このメールには返信できます。感想・異論・「うちの会社ではこうだった」という実例、どれも歓迎です。
水戸貴之/note『コンプライアンスの地図』
このレターが役に立ちそうな方がいたら、転送してあげてください。
登録ページ: compliance-map.beehiiv.com