水戸です。

夏に軒先で鳴っているあの音を正しくは風鈴と呼ばないそうです。

事典によれば、あの構造 ── 錘の下に短冊のような軽いものを結び、風で揺らして鳴らす ── から見れば、名称としてふさわしいのは「風鐸」のほう。文献上も風鐸が古い。それでも生き残ったのは風鈴でした。

正確な名前が、負けたわけです。

そこから、仕事で毎日使っている四語も調べました。コンプライアンス、リスク、ガバナンス、内部統制。四語とも、もとは動いている言葉でした。内部統制の control は「照合用の控えの巻物」。帳簿を二冊書いて突き合わせる、あれです。「支配する」の語義が出るのは、そのあと15世紀の半ばでした。

照合が先で、支配は後。日本語の「統制」は、後から来たほうを引き受けています。

記事はこちらです(三回に分けて書いています。今回は第1回)。

編集後記

調べているあいだ、一度きれいに間違えました。

四語の語源を並べていて、「四つのうち三つが海の言葉だ」と思ったのです。govern は操舵、risk は岩礁説がある、comply も…と数えかけて、止まりました。comply は海ではありません。complere で、器を満たすほうの言葉です。risk も、多くの辞書が語源を不確かとしている。三語が海というのは、成り立ちませんでした。

きれいに揃うと、それだけで正しい気がしてきます。

結局、記事には「舵を切る手。帳簿を繰る手。器を満たす手。どれも、誰かの手が動いています」と書きました。海のほうが絵にはなりますが、揃わないまま並べたほうが、言いたいことに近くなりました。

もう一つ。「コンプライアンスは法令遵守ではない」という指摘そのものは、日本ではまったく新しくありません。郷原信郎先生が2005年に書かれています。それを知ったうえで、では自分が何を足せるのかを三点だけに絞りました。記事にもそう書いています。それ以外は、先行の再演です。

第2回では、では日本語のほうに言葉が無かったのかを見ます。

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水戸貴之/note『コンプライアンスの地図』

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