水戸です。

先週から始めた『朝3分の分岐点』の第1週が終わりました。

5本を並べて読み返したところ、半分がルール違反の話ではなく、規程を守った人の判断で起きていました。そこで気づいたことを記事にしています。

いちばん象徴的だったのが、ある製薬会社の健康被害の件です。

社内規程には、医薬品について「未知の重篤症例が4件あれば本部長に報告する」という基準がありました。担当者はこの基準を参照して、報告を見送っています。問題の製品は食品でした。報告書の脚注には、食品については具体的な報告基準が定められていなかった、とあります。

基準がないところは、空白のままになりません。隣の領域の基準が流れ込みます。しかも借りてきた基準には、なぜその数字なのかという理由が付いてきません。それでも、判断を止める力だけは持っています。

記事では、この5件から見えたことと、設計する側が手を入れられる4点を書きました。

編集後記(レター限定)

この記事は、書きながら芯が一度入れ替わりました。

最初のタイトルは「守った人が、止めた」でした。短くて気に入っていたのですが、これだと何の話か伝わらない。読む人が題名から中身を推し量れないタイトルは、自分の側の自己満足だと思い直して変えました。

もうひとつ、書き出しに大雨と警報の話を置いていました。基準に達しなければ警報は出ない、それでも雨は降っている、という導入です。これは丸ごと落としました。事例そのものが十分に具体的なのに、その前に別の説明を挟むと、読み手を二度歩かせることになります。

いちばん大きかったのは、「4件」の位置づけを確かめようと報告書を読み直したときでした。最初は、社内規程が定めた報告基準に達していなかったから報告されなかった、という話として書くつもりでいました。ところが本文をたどると、4件は医薬品についてのルールで、担当者はそれを参照したと書かれている。そして脚注に、食品については基準が定められていなかった、とありました。

ここで記事の中身が変わりました。「規程どおりに動いたら止まった」ではなく、「基準がない場所に、隣の基準が入ってきた」という話です。後者のほうが、はるかに厄介です。基準を作るとき、私たちはどこに線を引くかを議論しますが、線を引かなかった領域がどうなるかは、あまり議論しません。

最後にもう一箇所直しました。処方として「四半期に1件、規程どおりですで止まった案件を読む」と書いたのですが、やり方を書かないとただの掛け声になります。どこから案件を抜き出し、誰が読み、何を見るのか。そこまで書いて、ようやく手が動く形になったと思っています。

このメールには返信できます。感想・異論・「うちの会社ではこうだった」という実例、どれも歓迎です。

水戸貴之/note『コンプライアンスの地図』

このレターが役に立ちそうな方がいたら、転送してあげてください。