水戸です。

三回に分けて書いてきた「訳語」の話、今回が最後です。

内部統制は「内部照合」に訳し直せます。contrarotulus の原義そのまま。統制する、から、突き合わせる、へ。この一語を変えるだけで、会議で出てくる質問が変わります。「何と何を突き合わせているのか」「突き合わせた結果はどこに残るのか」。

ガバナンスは「舵取り」。リスクは、語源が定まっていないので触りません。

問題は compliance でした。遵守は結果です。そこに至るまでの行動とスタンスを指す語が、日本語のコンプライアンスに一つも用意されていない。名前のない工程は、管理もされません。

それでも、一語には決めませんでした。理由は二つ、記事に書いています。

最終回はこちらです。候補の一覧表も載せました。

編集後記

この回は、書いては消してばかりでした。

最初にコンプライアンスの訳として置いてみた語は「満足」でした。相手の要請を満たして、満足してもらう。書いてから、それも結果の側だと気づきました。遵守を否定しておいて、自分も同じ側の語を置いていたわけです。

そこから何度も書き直して、最後に残ったのが「おもいやり」でした。漢字で「思いやり」と書くと道徳の時間の言葉っぽくなるので、ひらがなで書いています。

ただ、この語が弱いことも分かっています。心を言い表す語なので、「あの部署はおもいやりが足りない」と誰かが言い出した瞬間に、個人を責める道具になる。足りないのは気持ちではなく、確かめる工程のほうなのに。

書き終えて気づいたのは、自分がなぜこの仕事の形式面に反発してきたのか、ということでした。形式的なコンプライアンスに、あまりにもおもいやりがない。誰の何を満たすためなのかを確かめないまま、形だけが積み上がっていく。あの居心地の悪さの正体は、たぶんこれです。

一語に決めなかったのは、逃げでもあります。決めれば、その語は三年でポスターになる。それが分かっていて決められませんでした。

みなさんなら、何を置きますか。返信で教えていただけたら嬉しいです。

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水戸貴之/note『コンプライアンスの地図』

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