水戸です。

中部電力が浜岡原発の廃炉作業で不正手続きがあったと公表しました。
報道のなかに、関係者の「職員の順法意識があまりに低すぎる」という言葉があります。

この言葉が出てくること自体を責めたいわけではありません。会社を守るために、そう言わざるを得ない面もあると思います。

ただ、こういうことが起きるたびにそう説明され、繰り返されるうちに「順法意識が低いから問題が起きる」という図式が定着してしまったことに、引っかかりというか正直、少し憤りがあります。

同じ記事に、意識では説明のつかない事実が並んでいました。動機は特定済みで、会社自身も「一個人の手によるものではない」と言っている。そして不正は、規制庁が調査に入った後も続いていた。意識が低いだけなら、監視の目が来た時点で行動は変わるはずです。

孫子の軍形篇に、勝つ側は先に勝ってから戦い、負ける側は先に戦ってから勝ちを探す、という一節があります。一夜城と呼ばれる石垣山城も、記録に残っているのは約80日の土木のほうです。

順法意識が低いという言葉は、こうした準備をせずに負けてから、敗軍の将が自らの兵法ではなく兵を責めている言葉に聞こえます。

記事はこちらです。

音声で聴く版(YouTube)もあります。

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【編集後記】

この原稿は、書き上げてから2回大きく削りました。

最初の版は4,400字ありました。節が12あって、事実の提示と解釈の提示を別々の節に分けていたので、読んでいて息が続かない、というかつまらない。節を6つに畳んで3,100字にし、そこからさらに削って2,800字台に落としました。

削るときに迷ったのが、「研修が増える。誓約書が増える。唱和が増える」という一段落です。「順法意識が低い」という説明が定着すると、対策も意識にしか向かわなくなるなと思って削りました。

もうひとつ、書いていて自分でも整理がついたのが、憤りの向け先です。当初は「順法意識が低い」と言った関係者への反論として書き出していました。でも書いているうちに、その人にも立場があるとしか思えなくなってきた。会社を守る側に立てば、そう言うしかない場面はあります。

残ったのは、機能や会社や制度が前に出てきて、人への配慮が後ろへ下がっていく構造のほうへの憤りでした。

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水戸貴之/note『コンプライアンスの地図』

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