水戸です。

3線モデルの後編を公開しました。
前編は原典を3世代読み比べた話でしたが、今回は日本側の話です。

経済産業省のグループガイドラインは、3線ディフェンスを「内部統制システムの構築・運用のための実効的な手段」と位置づけ、巻末に体制図まで添えています。

一方の原典が掲げていた目的は「役割と責務を明確化して、リスク管理と統制に関するコミュニケーションを改善すること」。

この差を「ガバナンスが内部統制にすり替えられた」と説明したくなるのですが、原文に当たるとそう単純ではありませんでした。会社法362条4項6号は内部統制システムの整備を取締役会の専決事項とし、5項は大会社に決定を義務づけています。統治の仕組みの中に、ちゃんと置かれている。

ずれているのは別の軸でした。説明するための道具か、構築するための道具か。

そして最も重いのが、対外説明が完了の印になることです。
有価証券報告書に「三つの防衛線による管理体制を構築している」と書ける。説明ができた時点で、検討が止まります。

編集後記

この後編、書き上げたあとに背骨を一度書き直しています。

最初の版で私は「原点にあった『より広いガバナンス・フレームワークの中の役割分担』という限定は、日本にはどこにも残っていない」と書いていました。輸入の過程で限定が落ちた、という筋です。書いているときは、うまく言えたと思っていました。

読み返して、これは成り立たないと気づきました。会社法の条文を確認すると、内部統制システムの整備は取締役会の責任として法定されています。つまり日本でも、3線は統治の仕組みの中に置かれている。限定は落ちていなかった。

そこで気になって、もう一段調べました。「内部統制はガバナンスの一部である」という関係を、日本の公的文書は明示しているのか。金融庁の意見書(令和5年4月)を読むと、内部統制・ガバナンス・全組織的リスク管理の三者を並列に置いて「一体的に整備・運用する」と書いてある。包含関係を定義した公的文書は、私が確認した範囲では見当たりませんでした。

ここで、記事の見え方が変わりました。原典は「より広い枠組みの中で」と言った。しかし日本では、その「より広い枠組み」の輪郭が公的に引かれていない。だから3線を置く先として、法定されていて輪郭のはっきりしている「内部統制システム」が選ばれた ── すり替えではなく、受け皿の問題だったのではないか、と。

自分の書いた筋が崩れたところから、前より面白い話が出てきました。こういうことがあるので、原文に当たる作業はやめられません。

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水戸貴之/note『コンプライアンスの地図』

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